結果的加重犯は例えば傷害行為に及んでいたら、相手には死の結果が生じてしまい傷害致死となるようなものです。
これが初めから殺すつもりだったら殺人ですね。
この結果的加重犯についてですが
これは基本となる犯罪は実現されたあと、更に一定の結果が発生した場合、加重処罰するというものです。
懲らしめてやろうと思って傷害を実現したあと、死という結果が発生した場合、傷害致死としてさらに重い刑罰となります。
この場合加重結果への認識は不要です。もし認識していたらそれは加重結果ではなく正犯となるでしょう。
つまり結果的加重犯の成立には、基本犯の行為と加重結果との間に因果関係があれば良く、
そこに過失は不要です。(最半昭和32.2.26)
理由としては基本犯の行為に加重結果をもたらす危険性が含まれているから、ということです。
ではこれを踏まえて結果的加重犯の共犯や教唆犯、従犯(幇助)はどうでしょう。
まず前提として加重結果には過失は不要です。
つまり因果関係があれば足りるということです。
そうなると結果的加重犯の共同正犯は
基本犯の共同行為と結果との間に因果関係があれば結果的加重犯の共同正犯は成立します。
共同正犯は正犯者の加重行為についても同罪ということですね。
では教唆・幇助についてはどうでしょうか。
例えばちょっと懲らしめてやんなよと傷害を教唆したのですが、正犯者は傷害致死の結果をもたらしたとき、教唆犯はどこまで責任が及ぶでしょう。
さてこれも加重結果には過失は不要であるという前提であるならば、あとは因果関係があれば成立します。
つまり教唆・幇助についても共同正犯と同様に成立します。
傷害致死の教唆ならば、傷害教唆致死といった具合ですね。
ここで相手を殺すという故意があればただの殺人の教唆と正犯となります。
つまり犯罪が発生した以上、その犯罪に加担した人にはしっかりその結果に対する罪責を負うということです。
さてこれらはれっきとした故意がある場合ですが最後に過失犯にについてです。
はたして過失犯の教唆・幇助はどうでしょうか。
過失犯とは不注意によってその行為と結果が発生した場合をいいます。それを教唆・幇助したものをいいます。
例えば殺人を決意している甲に対して、そうとは知らずに乙は刃物を販売したという場合です。
幇助とは正犯の実行を容易にすることを言うので、乙は不注意(過失)によって甲を幇助したということになります。
結論、これはさすがに成立しません。
これも成立させてしまうとあまりにも処罰範囲が広がりすぎますし、刃物を販売している人みんな過失幇助ということになります。
確かに因果性はあるにはありますが、ここまで因果性を遡るのは不当でしょう。
ただし、乙が甲の故意を認識していれば幇助が成立します。
教唆についても同様です。
教唆とは犯罪を決意させることで成立しますので、不注意によって相手に犯罪を決意させるというのは、それはもはや受け取る側の問題でしょうということです。
また過失犯処罰には特別の規定が必要となりますが(38条1項)、過失による教唆・幇助を処罰する特別の規定はありません。
これも過失による教唆・幇助は成立しないという根拠になります。
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