刑法「判例と学説」

法律

色々な学説がありますが、実務的には通説となっている判例から考えることが多いです。

ですがそれぞれの学説をしっかり知ることで、刑法の刑罰に至るまでの道筋がだんだんと分かってきます。

構成要件には実行行為、結果、因果関係の成立がありますが、一口に事件といっても色々なパターンがあります。

 

ただの殺人だけでなく、客体の錯誤や方法の錯誤、

相手に思わぬ病気があり殺すつもりはなかったのに死ぬような行為でもないのに死んでしまった。

同じく思わぬ病気があり、でも殺意をもって行為をし、死ぬような行為でもないのに死んでしまった。

殺すつもりで死ぬような行為をして、でも相手は死ななかった。

死ななかった相手を死んだと思ってトランクに入れて、トランクの中で車がカーブして頭を打った衝撃で死んだ。

殺すつもりはなかったが、死ぬかもしれないような行為をした。でも相手はしななかったが、誰かにちょっと頭を蹴られたようでそれが原因で死んだ。

 

それぞれ殺人既遂、殺人未遂、傷害致死、無罰、それぞれ学説によって色々な罪が成立し得ます。

 

これは実行行為と結果との間に因果関係があるかどうかが最大の論点になります。

ここで因果関係が否定された場合は結果不発生と同じこととなり無罰ということになります。

 

ここで二つの重要判例があります。

①大半大12・4・30

甲がAを殺そうと思い首を締め、Aが動かなくなったので死亡したと思い、砂浜に放置。しかしAがまだ死んでなく砂を吸引して窒息死。

 

②クロロホルム事件 最決平16・3・22

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

クロロホルムを吸引させて失神させた後、車ごと海中に転落させて溺死させようとしたが、実際はクロロホルム吸引により死亡した。

 

どちらも殺人既遂が成立するということはわかりますが、それには実行行為と結果の因果関係の成立がどのような理論でするかが重要です。

 

①は首を締めたという行為、砂浜に放置という行為、という二つの行為があります。

第一行為では殺人未遂、第二行為で殺人既遂、保護責任者遺棄等が考えられます。

この第一行為では殺人の故意があり結果との錯誤があります。ですがその後の砂浜に放置するという行為は決して特別異常な行為とは言えない。殺人を犯した後、発覚を恐れ死体をどこかに放置をするということは容易に考えられる行為である。

即ち第一行為と第二行為の間には因果関係が肯定でき、第一行為の結果が死と考えれられるということです。

 

さて②にいきますが判例の結果でも殺人の既遂という判決がでています。

殺人の故意があっての行為があり、その結果が犯人の認識とは異なりますが因果関係は十分に認められます。

 

・法定的符合説では認識した内容と発生した事実とが法定の構成要件の範囲内で符合している限り故意を阻却しない。

・故意の要件に因果関係の認識は必要であるが、詳細な認識は必要ではなく、因果関係の大筋について認識があれば足りる。

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