身分と聞くと一般的には家柄の階級を思い浮かばますが
刑法上の身分とは、一定の義務を負う者と考えれば良いでしょう。
例えば金庫管理や会計といった会社内でお金を扱う仕事を任されている人は
会社のお金を正しく扱う義務を負っています。
そのため単純横領よりも罪が重い業務上横領が成立するんですね。
単純横領よりも業務上横領の方が罪が重くなるのは、責任、身分があるということ。
そしてその責任があるということは、その人に信頼を委ねて任せたのにそれを利用したという悪質さがあるからです。
ではこの業務上横領を身分のない者(業務とは関係ない者)が教唆したらどうでしょうか。
教唆犯は正犯と同じ刑が科せられます。
しかし判例(大阪高裁判昭和62.7.17)「事後強盗の承継」によると
非身分者が身分者に加功するとき、非身分者には通常の刑が科せられるとされてます。
ですので業務上横領を教唆した一般人には単純横領が成立するということです。
それだけ身分を持つものは自覚しなければならないということですね。
但しそこに錯誤があった場合や騙して結果横領させた場合は間接正犯に問われてくるでしょう。
では逆に身分者が非身分者に加功した場合はどうでしょうか。
この場合も判例での結論は、身分者には身分犯の刑(重い刑)を非身分者には通常の刑となります。
正犯の非身分者の方が罪が軽くなるということですね。
これは65条2項の規定は身分のあるなしについて規定されており、共犯か正犯かについては問われていないことから
身分犯の成立に共犯か正犯かは関係ないということですね。
コメント