刑法「途中参加した共犯(承継的共同正犯)」

法律

共犯にはさまざまなパターンがあり、色んな場合において論理的に結論を導く必要があります。

狭義の共犯は共同正犯・教唆犯・従犯がありましたが

共謀段階から参加しているのではなく実行行為の途中から急遽参戦した場合はどうなるのでしょうか。

 

例えば

Bは殺意を持ってAに暴力をふるっている。そこにたまたま通りかかったCも参戦し、結果Aを死亡させた。

 

さてここで実行行為、結果、因果関係を検討していくのですが

Bは当然殺人既遂が成立します。

ではCはどうでしょうか。

Cも実行行為から、暴行、傷害(致死)、殺人の既遂のいずれかが成立することになるでしょう。

ここで問題となるのは

・Aの結果(死亡)はどの行為が原因によるものか。つまり因果関係は何か。

・Cはどういうつもりで暴力行為に及んだか。

ということです。

 

例えばAの結果はBによってもたらされているのならばCに殺人既遂は成立しないでしょう。

そうなると暴行罪(傷害未遂)の限度で共同正犯が成立することになります。

 

ではCの暴行も原因の一つであるならば、殺人既遂・傷害致死が成立するでしょう。

これは故意によって異なってきます。

 

では誰の行為によって結果(Aの死)がもたらされた場合はどうでしょうか。

これは「疑わしきは被告人の利益」に則ります。

つまりCが原因かどうかわからないなら、Cが原因ではないと考えます。

これは先ほどの例と同じく暴行罪の限度での共同正犯となります。

 

ちなみにどんな因果関係でもBの殺人既遂は揺るぎません。

 

さてこの場合Bを先行者、Cを後行者としまして少しまとめると

 後行者が先行者の行為及び結果を、自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思の下

 先行者の犯罪に加担し、現にそのような手段として利用した場合

 承継的共同正犯の成立を肯定する。

 

故意、実行行為、因果関係ですがこの故意の部分が重要となってきます。

ではここで先行者の行為を利用して行える犯罪ですが代表的なものがいくつかあります

・強盗罪 ・詐欺罪 ・恐喝罪 ・強制性交罪 ・継続犯(監禁罪など)

例えば詐欺罪なんかはわかりやすいですが、先行者が被害者を騙しているのを確認して、自分も被害者に詐欺をはたらいています。

これは前項の要件にばっちりあてはまります。

これらは共同正犯の成立が肯定される代表的なものです。

 

では共同正犯の成立が否定される場合はどのようなときでしょうか。

まず

①因果関係が成立しないときです。

その時は全ての共同正犯が成立するのではなく、一部の刑の限度で共同正犯が成立します。

  

次に

②結果的加重犯について、先行者によって重い結果が発生した時。

これは①の場合を具体的にしたという感じです。

結果的加重犯とは傷害致死、強制性交等致死傷、強盗致死傷などです。

ちなみに傷害の場合ですが、因果関係が不明な場合については刑法207条が適用されることとなります。

 

刑法207条

2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者ではなくても、共犯の例による。

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