商法「資本金・有価証券」

法律

大会社の規定の一つに資本金5億円以上というものがありました。

この資本金というのが会社の規模を表す指標になるのですが、これは純粋な会社の預貯金ということではありません。

 

ここで資本金制度の意義についてですが、それは会社の出資者だけでなく債権者も守るということからあります。

これは株主は出資分しか責任を負わないわけなので、債権者からすると債務者である会社に余力資金がなければ大変な損害を被ることになります。

これを避けるために会社はある程度の資金を残しておかないといけないという制度が資本金です。

この資本金は原則として、株主が払い込みまたは給付をした財産の総額となります。(445条)

 

資本金の制度は会社法(2005年国会成立、2006年施行)の下でも維持されていますが、制定以前は資本金が1000万なければ株式会社を設立できませんでした。

今はこれがなくなって1円起業が可能になっています。

なお会社法では、配当などは純資産額(総資産から債務を引いた額)が300万に満たない場合は行えないとされています。(458条)

 

資本金についてはこのくらいなのですが、次に有価証券について。

有価証券とは財産的価値を有する証券で、権利の移転や行使は証券によってなされます。

つまり、財産的価値が記載されている紙であれば有価証券であるのでライブのチケットや電車の切符も有価証券になります。

これは権利とは目に見えないものですので、だれがいつ権利を得たかをはっきりとさせる為に、権利と証券が結合したものを有価証券として活用しています。

 

特にビジネスにおいては多額のお金でのやりとりが必要になるのでこういう証券は多用されています。

手形や小切手などがそれにあたりますが、二つとも支払う手段のことです。

例えば数千万の売買をするとなると大量の札束を持って売主の元へ行かなければなりませんし、それだけのお金を持ち歩くのは危険でもあります。

そこで小切手で、このお金のやりとりの部分だけ銀行にやってもらう手段をとることができます。

 

手形は支払いを猶予する手段のことで、約束手形を振り出すとドラマなどでもよく聞きます。

約束手形は例えばある商品を大量を仕入れたいのですが、その代金の支払いは、商品を仕入れた1ヶ月後(ある程度売ってから)にしたいという場合があります。

こういう場合などでは、信用に足る手段が必要で、それが約束手形を振り出すということが有効です。

もちろん会社の事情で期日にその金額を支払えるという絶対の保証はないのですが、万が一支払えなかった場合は会社には致命的なペナルティーが科せられます。

様々なことがありますが、この手形が支払われないことを不渡りといいます。6ヶ月の間に2度不渡りとなった企業は2年間の銀行取引停止処分となります。

これは手形の振り出しができなくなりますし、銀行からの借り入れもできなくなるので、企業はほぼ間違いなく倒産となってしまいます。

そのため振り出し人(企業)はなんとしてでも手形の支払いに努めるようになります。

 

この約束手形は振出人がしっかりと誰にいくらと記入し、それをもって権利が発生します。

この手形は譲渡可能で、受け取る権利を裏書人に記載された人へと移っていきます。

最後の裏書人を最終裏書人といい、この裏書の連続さえ立証すれば権利行使可能です。

 

約束手形はこの紙さえあれば権利が成立するので、しっかりと証券を管理しなければいけません。

例えば誰かが手形の裏書人を勝手に書いたとします。

当然このような約束手形はみとめられず、手形として有効な形ではありません。

このような場合を交付欠缺(こうふけんけつ)といいます。欠缺とは欠けているという意味です。

 

交付欠缺については交付契約説と創造説があります。

交付契約説は手形を作成して、授受(手形の交付)をもって手形債権の発生という説。

創造説は手形を作成することで手形再建が発生するという説です。

それぞれに根拠となる法があります。

交付契約説 民法97条1項、98条の2、526条2項

創造説 善意取得16条2項

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