取材源の秘匿権についての続きですが
博多駅テレビフィルム提出命令事件・日本テレビビデオテープ差押事件・TBSビデオテープ差押事件
この三つは最重要判例です。
取材源秘匿権は一律規定なのではなく、裁判所、捜査機関(検察、警察)のどこからの要請なのかによって基準がことなります。
そのうちの裁判所からの例では博多駅テレビフィルム提出命令事件です。
これはアメリカの原子力空母の佐世保港寄港を阻止するでもに参加する全学連の学生たちですが
博多駅に下車したところで機動隊と激しく衝突しました。
それは激しいもので学生たちは機動隊からその頑丈な盾でかなりの暴力を受けたようです。
そしてその様子は地元のテレビ局によって撮影されていました。
この機動隊は警察です。
そして学生たちはこうして暴力を受けたことを届け出たのですが、起訴されることはありません。
それは検察は警察の味方ですので、当然のように握りつぶされてしまったのです。
そしてその暴行事実をきちんと訴え、その証拠映像ということでテレビが録画している映像が必要になったということです。
これは警察に訴えでて検察が調べていることではありません。
検察では握りつぶされてしまうということで裁判所へと訴えたものです。これを特別抗告といいます。
さて裁判所からのテレビフィルム提出命令ですが
本件の場合のテレビフィルムは罪責の有無を判定する上でほとんど必須のものであり、
取材の自由が妨げられる程度も、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるにとどまると判断されました。
それによりテレビフィルムの提出命令を合憲としました。
テレビフィルム提出後の特別抗告審ですが、結論は映像確認後も審判は下りませんでした。
それは機動隊は全員完全に防具で覆っており、暴行の事実は確認できましたが、人物の特定ができなかったのです。
さて博多駅テレビフィルム提出命令事件ですが、提出命令は合憲とされたのはまず裁判所からの要請というのがポイントとなります。
裁判所からの命令ということは、公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるということです。
これを前提として提出の利益と不提出の利益とが比較衡量されます。
もちろん報道の自由も考慮して、報道機関の不利益が必要な限度を超えてはなりません。
では本件のテレビフィルムはどうかというと
本件フィルム映像はすでに放映されたものを含む放映のために準備されたものです。ですのでこのフィルム情報が証拠として使用されたとしても重大な秘匿情報が公開されたとはいえないということです。
他捜査機関から、検察からによっても比較衡量というのは変わりないですが、その中身が異なってきます。
ちなみに刑事事件においての取材源秘匿は刑事訴訟法143条で列挙されている者に限られます。
さて捜査機関(検察、警察)からの取材源提出命令はどうでしょうか。
ここで重要なポイントとなるのが適正迅速な操作の遂行の要請は憲法上の要請ではない。ということです。
これが捜査機関からの要請ということで、裁判所からの要請とは本質が異なります。
憲法上の要請ではないため、比較衡量にあたっては厳格な審査でもって判断すべきです。
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