民法「相殺」

法律

債権の消滅方法として、まずは弁済ですが相殺という方法もあります。

債権は金銭債権なら借金で、弁済というと純粋にお金を返して借金消滅ということです。

では相殺とはお互いの債権で消しあって債権を消滅することができるというものです。

 

相殺は弁済とは違って、その時に偶然できる状況であるという条件が揃ってないといけません。

お互いに債権がないといけないのは当然ですし、その債権がお互いに対立しており、さらに相殺に適している債権同士でなければなりません。

こうした相殺するに適した債権であることを相殺適状であるといいます。

 

他にも相殺適状である要件として、債権が法律による相殺禁止にあたらないことがあります。

法律による相殺禁止とはどういう状態かというと、その債権は他の人が触ったりしてはいけないものということです。

具体的には受働債権が

・不法行為等によって生じたもの

・差押禁止

・支払いの差止めを受けている(自働債権でもこの要件はあります)

 

ここででてきた自働債権と受働債権ですが

相殺する側の債権(自働債権)と相殺される側の債権(受働債権)のことをいいます。

どちらが相殺したいかによって自働債権か受働債権かは変わります。

 

そしてこの相殺は一方的意思表示によって可能です。

つまり自働債権からすると一方的な意思表示による履行の強制と同じとなり

受働債権からすると任意の弁済と同じです。

お互いの借金で打ち消し合うということですが、同じ性質であることなど要件はやはり細かく規定されています。

 

そして大事な要件としてお互いの債権の期限が弁済期にあることも必要です。

もし弁済期でないのに相殺によって債権を消滅さしたならば、債務者は期限の利益を失ってしまうからです。

そのため期限の利益の放棄又は喪失等により受動債権の弁済期が現実に到来していなければなりません。

 

さて法律はあらゆる場面を想定して規定が置かれています。

以前の記事でもまとめましたが債権は譲渡することが可能です。

では譲渡された債権で相殺できるのかというと、これは可能です。(但し同じ性質などの要件を満たして相殺適状であれば)

しかし債権が譲渡される前、既に消滅時効にかかった債権を譲渡されたならばその債権は自働債権として相殺することはできません。

 

判例では相殺適状にあった債権でも、相殺の意思表示前に弁済・解除等の原因によって適法に消滅した債権に対しては相殺の効力は及ばないとされています。

しかし受働債権であった場合は相殺可能です。

自分が持っている債権はちゃんと消滅していない完璧な状態でなければ相殺できませんが

相手が持っている債権については相殺可能ということです。

 

さて債権や相殺でどっちがどっちが非常にややこしいです。

AとBの間でお金の貸し借りをしていたとします。

AがBにお金を貸していたとしたら、Aが債権者でありBに対して債権を持っています。

強い方が債権者で、債権をもっています。

ではこの債権を消滅する義務を持っているのは債務者であるBです。

ではこの債権はBが消滅させるために、そういえば昔Aに同じ金額貸していたぞとなって打ち消し合おうと言い、Aが同意したとします。

そうなるとBはこの債権を相殺する側であるので自働債権となります。

 

相殺適状の要件は505条にかいてあることそのままですので、本文とただし書にしっかりありました。

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