相殺は、その起こっていることは単純なことなのですが、相殺できる条件が非常にややこしいところです。
それぞれの債権がお互いに向き合っていることや、相殺するのに適した債権であること、有効に存在すること(適法に消滅した債権や消滅時効にかかった債権を譲り受けていないもの)が必要です。
つまり相殺はなかなか簡単にできるものではないということです。
さて今のような相殺で例えば既に時効消滅していた債権を譲り受けたとします。
時効消滅した債権とは実際には借金があるけども、長期間その借金を放置していて法的に時効消滅してしまっているものとかです。
具体的にCがAから随分昔に借金をしていたとして、Aはこの借金取り立てる権利をBへ譲渡します。
つまりBは実は時効によって消滅している債権を譲り受けたということです。
この時点でCはAから借金をしている(していた)のではなくBから借金をしていることになります。
では同時にBもCから借金をしていたとします。(消滅していない有効な債権)
ここでBは譲り受けた権利を利用して自分がCからしている借金を相殺したいという場面です。
これがBから相殺するのではダメということです。
このBから相殺する債権を自働債権といいます。
ですが原則あるところに例外ありで、これが逆からならば有効です。
つまり既に時効消滅している債権を使って打ち消そうとCの方から相殺するのならOKです。
Cからすると時効消滅している債権ですのでその消滅が守られるのですが、その利益を自ら放棄するのならばかまわないということです。
これが自働債権は相殺不可だが、受働債権なら可能ということです。
他にも代表的なものとしては例えば相殺禁止の特約があるときも不可能です。
特約が優先されるということは任意規定ということですね。
また法律によって相殺禁止となっている債権があります。
それが不法行為等によって生じたときです。
不法行為というと例えば暴力を振るわれてその損害賠償といった場合などです。
なぜこれが相殺禁止となるかというといくつか理由があります。
まずこれによる相殺を許してしまうと、逆に債権があればそれを不法行為による損害賠償で相殺してしまおうということができます。
AがBからお金を借りているとして、Aは全く返す気はないようです。ですのでBはそれならせめてということでAに対してめちゃくちゃにしたとします。
Aからするともうお金は返ってこないならこれでせめてということができましたが
こういう解決方法が保護されてしまうと不法行為による解決を認めてしまうことになります。
またまた不法行為だけでなく人の生命又は身体の侵害による損害賠償債務についても法律により相殺不可です。
これは相殺してしまうと、今現在大怪我を負っているのにその損害賠償のお金がもらえないことになります。
そうなると大変なことになりますので、やはり命を1番に優先しないといけないですからここは相殺禁止にしようということです。
しかし被害者の方から相殺しようということならそれは構いません。
つまり相殺によって相手の利益を奪うことになる場合は相殺不可ですし、逆に利益を失う方からの相殺(自ら利益を放棄又は喪失)は可能ということです。
コメント