民法「悪意があっても成り立たせてしまう」

債権は私的自治の原則で自由に無限大に契約がありますが

さてでは物権ではそうはいきません。

175条「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」

と規定されています。意思表示のみにというのを意思主義といいます。

このように物権の設定についてしっかり決められています。これを物権法定主義といいます。

契約自由の原則は真逆ですね。

物権とは人の物に対する権利をいいますが、まず物は動産と不動産に分けられます。

これはかなり単純で土地、建物を不動産。それ以外が動産です。

ちなみに土地に生えている立木は土地の一部となっています。

 

さて物権も金のやりとりをして売買されていきますので、所有権が移動したりなどします。

これを物権の変動と言って、物権の変動は発生、変更、消滅の三つです。

 

では前述の民法175条であるように物権は当人同士の意思によって成立するとあります。

これがパンとか小さい物ならいいですが、それこそ不動産とか大きい物でも良いのでしょうか。

契約だけで所有権が移転するということは確かにその通りなのですが、これでは後々トラブルになりそうです。

というのは当人同士ではいいですが、それを第三者に示すものがないからです。

これは誰のだということではっきりと自分のだと示すものがないと、それを悪用する人たちは大勢います。

二重譲渡という場合を考えてみると

Aの所有物である土地があり、それをBに売ったとします。

でもそのあとCが現れもっと高値で売って欲しいと言われ、既にBに売った後ですがAはCに土地を売りました。

つまりAはBとCに土地を売ったということでぼろ儲けです。さてこの土地は誰のものということですが

B:ここで先に自分が買ってるんだからその時点でおれの物であるはず。勝手にAはAの物と言い張って売っただけだ。

と当然思います。

ですがこれを主張する根拠がありません。

なぜから第三者に示す対抗要件がないからです。不動産の対抗要件は登記です。(177条)

このお金の引渡しをしてるので契約は完了しています。しかしまだ登記上はAの土地ですので、Aの土地をAがどう使おうと売ろうと処分しようと自由なのです。

 

ではBとの契約が終わり、AはCと契約をしました。そこでCはすぐに登記をすませ土地の権利者はCとなっていたとします。

この場合Cが第三者への対抗要件をもっているので、Cが自分の土地だと主張できます。

このように第三者に所有権の移転を主張するためには対抗要件が必要とする制度を対抗要件主義といいます。

もちろん当事者間だけではこのような対抗要件は必要ありませんが、こうしたこと一つでBは土地もお金も失ったということです。

これは現実にいくらでもあったことだと思います。

不動産の対抗要件は登記ですが、動産の対抗要件は引渡しです。(178条)

 

もちろんこれは、言葉巧みに契約してこっそり他の人とも契約しといて登記させるといった詐欺にも使われるのが怖いと思います。

でも実際これは悪意のある第三者にも登記があれば所有者であると認められます。

判例・通説では悪意の第三者でも譲受人に当たると考えられます。

その根拠は自由競争であるからで、どちらが先に対抗要件を取得して登記するかは自由競争の問題であるので、単に悪意(二重譲渡と知っていた)としても排除されないということです。

 

でもでも流石にこれがあまりに度を越していたら

これを配信的悪意者排除論といい、悪意を超えて信義則(1条2項)に違反すると認められればしっかり第三者から排除されます。

 

ですがやはり不動産はすぐに登記できないとなると契約しないのがいいでしょう。

この不動産の登記のように、しっかりと権利を公示できるものがあり、権利があっても公示がないと保護されないことを公示の原則といいます。

公示の原則は動産、不動産の両方でいえます。

逆に公示がなくとも、信頼して取引したことを保護することを公信の原則といいます。

公信の原則は動産にのみでいえます。

土地や建物は別々の不動産ですので建物の売買なのか建物と土地とセットなのかということもしっかりみないといけませんね。

 

知れば知るほど、知らないと信用だけで生きると大変なことになると思えることが目白押しです。

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