共犯にはいくつかの分類がありましたが、もっとも狭義な共犯が共同正犯です。
正犯がおり、それに共同して犯罪を実行した者がいたときに、その共同して実行した者も全て正犯とみなすものです。
これは刑法第60条で明文されています。
共同正犯も正犯とされるのでそれなりの要件を満たす必要があります。
それもそうで犯罪の一部に加担しただけでも共同正犯とみなされれば全部の責任を負います。
(一部実行全部責任の原則)
ですので間接正犯のような主従関係などなく、相互に利用補充し合うことがないといけません。
成立要件としては二つで
①共同実行の意思(意思の連絡)
②共同実行の事実
この二つは絶対に満たしていなければ共同正犯は成立しません。
ちなみに「①共同実行の意思」については明確に言葉にして意思の連絡がなくとも
黙示的にした意思の連絡でも成立します。
(スワット事件 最決平15.5.1)
さてここで大事な論点が出てきます。
このスワット事件でもそうなのですが、実際に実行行為をしていなくともその行為を指示した人はどうなるのか。
もちろん共同実行の意思は明確にありますが、実行行為がありません。
例えば
ある組織のリーダーAが組織の一員であるBCDEらと銀行強盗を企て、見張り、運転、ハッキングなどなどさまざまな役割に分かれて事件を起こしました。
Aは全員を指示し、それ以外は何もせず他全てはBCDEが行いました。
このAの罪も当然BCDEと同じ罪でないと不均衡といえるでしょう。
しかし実行行為がないのであれば共同正犯は構成要件を満たしておらず成立しない。
となると共謀した事実から教唆犯が成立することになります。
教唆犯は正犯と罪の重さは同じですので、科料としては問題ありません。
これが学説としては長い間通説となっていたようです。
ですがこれではやはり罪の均衡という面では納得できないでしょう。
そして判例ではしっかりこういうAも正犯として認められています。
こういうAを共謀共同正犯といいます。
ではこれはどのような理屈で共謀共同正犯といえばいいでしょうか。
これにはさまざまなものがありますが
包括的正犯説というものが分かりやすいです。
シンプルに相互利用補充関係が認められる限り、実行行為の分担がなくてもすべて正犯とするべきというものです。
こうした共謀共同正犯についてはいくつか重要な判例があります。
たとえば練馬事件(最大半昭和33.5.28)
では順次共謀についても正犯とするという大事な判例です。
共謀共同正犯は
共謀の事実があり
共謀に基づく実行行為があり
共犯者各自に正犯意思があれば
全てが正犯となります。
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